Blender’s
Attention

私は、アーティストではなく技術者として、いつ飲んでもおいしいもの、飲み手としていつでも誰かに薦められるものをつくりたいと思っています。

Message
from Chief Blender

厚岸蒸溜所
チーフブレンダー
立崎勝幸

大手乳業メーカーの管理職を辞して、単身、北海道・厚岸へ。
蒸溜所の立ち上げに一から携わり、チーフブレンダーとしてウイスキーづくりを牽引してきた立崎勝幸が語る、厚岸蒸溜所の現在地と未来。

WWA(ワールド・ウイスキー・アワード)2022 WWA(ワールド・ウイスキー・アワード)2022
ブレンデッド/ノーエイジ カテゴリ 世界最高賞受賞
SFWSC(サンフランシスコ・ワールド・スピリッツ・コンペティション) 2022 SFWSC(サンフランシスコ・ワールド・スピリッツ・コンペティション) 2022
2部門でのGG(ダブルゴールド)をはじめ計5部門 受賞

一本線のように、
ウイスキーをつくる。

厚岸は、ウイスキーづくりにとても適した土地だと感じています。ミズナラの森に降った雨が、冷たく澄みわたる清流になり、ピート(泥炭)層を通ってウイスキーづくりに欠かせない水になる。
スコットランド・アイラ島によく似た、一日の中でも天候や気温が大きく変わる環境や、潮風に乗って蒸溜所へと運ばれる海霧が、モルトの熟成を深めてくれる。ちゃんとつくれば、ウイスキーがおいしくなる条件が揃った環境です。

ただ、 ちゃんとつくる ということが実は一番大変なことで、原酒がジャパニーズウイスキーになるためには木樽で 3 年以上寝かさなければなりません。
週にして 1 5 0 週以上。 1 週間は 1 % にも満たない時間です。その 1 週 1 週をぶれ の無いように、造りのところで一切の妥協を許さない。すべての手順書・記録書を厳密に管理し、 一本線のようにウイスキーをつくる。 私たちが技術者として大切にしている、日々の心構えです。

多層なレイヤーを重ね、
心地よいピートの世界への
入り口をひらく。

多層なレイヤーを重ね、
心地よいピートの世界への入り口をひらく。

私も含め、厚岸蒸溜所にはウイスキーづくりの経験者がいません。スコットランドの文献や技術者に学び、トップレベルの企業が行っている品質管理を採り入れるために一人ひとりが勉強を重ねてHACCPの認証を取得し、一歩ずつ手探りで製造工程を築き上げ、ウイスキーづくりの技術を磨いてきました。

こうした経験を通して辿り着いたひとつのかたちが、ウイスキーの味や香りに“多層なレイヤー”を重ねていく、独特なブレンド法です。季節ごとにつくり分けた原酒や、いくつもの木種の樽を掛け合わせ、複雑さと奥深さを生み出していく。スコッチウイスキー特有のピートの世界をただ再現するのではなく、日本の若い女性にも楽しんでいただけるような“フルーティさ”を醸し出していく。「自分たちのウイスキーが、心地よいピートの世界を一人でも多くの方に知っていただくための入り口になれたら」。そんな想いで今日も、ブレンダーという仕事と向き合っています。

すべてを、
北海道の自然からつくる。
“テロワール”を活かし、
ここでしか生まれ得ない
ウイスキーを。

すべてを、北海道の自然からつくる。
“テロワール”を活かし、
ここでしか生まれ得ないウイスキーを。

アイラ島のようなウイスキーをつくりたい。私たちのウイスキーづくりは、アイラへの憧れと敬意から出発しました。今では厚岸蒸溜所のウイスキーのことを“ジャパニーズアイラ”と呼んでくださる方も増え、とても光栄に思っています。

スコットランドでは、古くからつくられていた蒸溜酒に重税が課せられることになり、たまたまそこに在ったシェリー樽にお酒を隠したところ、その味が評判になり“樽熟成”の文化が生まれたという逸話が伝わっています。そこに在る原料、そこに在る樽から生まれたもの、という意味ではウイスキーもワインと同じように“テロワール(その土地の環境・特性)”を生かした産物だと言えます。

北海道という土地、厚岸という土地の“テロワール”をウイスキーづくりに活かせるように、私たちはこの地で技術を磨き続けるとともに、土地の人々や自然とより深く向き合っていきたいと思います。北海道の大地で育まれた大麦やミズナラ、厚岸の美しい水や、ゆたかなミネラルを含んだピート。すべてを北海道からつくり、他のどこにも無いジャパニーズウイスキーを世界へ届けていくことが、私たちの願いです。